QMK/docs/ja/i2c_driver.md

10 KiB

I2C マスタドライバ

QMK で使われる I2C マスタドライバには、MCU 間のポータビリティを提供するための一連の関数が用意されています。

使用できる関数

関数 説明
void i2c_init(void); I2C ドライバを初期化します。他のあらゆるトランザクションを開始する前に、この関数を一度だけ呼ぶ必要があります。
uint8_t i2c_start(uint8_t address, uint16_t timeout); I2C トランザクションを開始します。アドレスは方向ビットのない7ビットスレーブアドレスです。
uint8_t i2c_transmit(uint8_t address, uint8_t* data, uint16_t length, uint16_t timeout); I2C 経由でデータを送信します。アドレスは方向ビットのない7ビットスレーブアドレスです。トランザクションのステータスを返します。
uint8_t i2c_receive(uint8_t address, uint8_t* data, uint16_t length, uint16_t timeout); I2C 経由でデータを受信します。アドレスは方向ビットのない7ビットスレーブアドレスです。 length で指定した長さのバイト列を data に保存し、トランザクションのステータスを返します。
uint8_t i2c_writeReg(uint8_t devaddr, uint8_t regaddr, uint8_t* data, uint16_t length, uint16_t timeout); i2c_transmit と同様ですが、 regaddr でスレーブのデータ書き込み先のレジスタを指定します。
uint8_t i2c_readReg(uint8_t devaddr, uint8_t regaddr, uint8_t* data, uint16_t length, uint16_t timeout); i2c_receive と同様ですが、 regaddr でスレーブのデータ読み込み先のレジスタを指定します。
uint8_t i2c_stop(void); I2C トランザクションを終了します。

関数の戻り値

void i2c_init(void) を除く上にあるすべての関数は、次の真理値表にある値を返します。

戻り値 説明
0 処理が正常に実行されました。
-1 処理に失敗しました。
-2 処理がタイムアウトしました。

AVR

設定

I2Cマスタドライバを設定するために、次の定義が使えます。

変数 説明 既定値
F_SCL クロック周波数 (Hz) 400KHz

AVR は通常 I2C ピンとして使う GPIO が設定されているので、これ以上の設定は必要ありません。

ARM

ARM の場合は、内部に ChibiOS I2C HAL ドライバがあります。この節では STM32 MCU を使用していると仮定します。

設定

ARM MCU 用の設定はしばしば非常に複雑です。これは、多くの場合複数の I2C ドライバをさまざまなポートに対して割り当てられるためです。

最初に、必要なハードウェアドライバを有効にするために mcuconf.h ファイルをセットアップします。

変数 説明 既定値
#STM32_I2C_USE_XXX ハードウェアドライバ XXX の有効化/無効化(すべてのドライバを明示的にリストアップする必要あり) FALSE
#STM32_I2C_BUSY_TIMEOUT レスポンスの受信がない場合に I2C コマンドを中断するまでの時間 (ms) 50
#STM32_I2C_XXX_IRQ_PRIORITY ハードウェアドライバ XXX の割り込み優先度(上級者向けの設定) 10
#STM32_I2C_USE_DMA MCU がデータ送信を DMA ユニットにオフロードする機能の有効化/無効化 TRUE
#STM32_I2C_XXX_DMA_PRIORITY ハードウェアドライバ XXX に使用する DMA ユニットの優先度(上級者向けの設定) 1

次に halconf.h ファイル内で #define HAL_USE_I2CTRUE にします。これにより ChibiOS が I2C ドライバを読み込みます。

最後に、使用したい I2C ハードウェアドライバに応じて正しい GPIO ピンを割り当てます。

標準では I2C1 ハードウェアドライバが使われます。もし他のハードウェアドライバを使う場合、 config.h ファイルに #define I2C_DRIVER I2CDX を追加します( X は使用するハードウェアドライバの番号です)。例えば I2C3 を有効化する場合、config.h ファイルに #define I2C_DRIVER I2CD3 と定義します。これにより QMK I2C ドライバと ChibiOS I2C driver が同期されます。

STM32 MCU では、使用するハードウェアドライバにより、さまざまなピンを I2C ピンとして設定できます。標準では B6, B7 ピンが I2C 用のピンです。 I2C 用のピンを設定するために次の定義が使えます:

変数 説明 既定値
I2C1_SCL_BANK SCL に使うピンのバンク (GPIOA, GPIOB, GPIOC) GPIOB
I2C1_SDA_BANK SDA に使うピンのバンク (GPIOA, GPIOB, GPIOC) GPIOB
I2C1_SCL SCL のピン番号 (0-9) 6
I2C1_SDA SDA のピン番号 (0-9) 7
I2C1_BANK(非推奨) 使用するピンのバンク (GPIOA, GPIOB, GPIOC)。後継は I2C1_SCL_BANK, I2C1_SDA_BANK です。 GPIOB

ChibiOS I2C ドライバの設定項目は STM32 MCU の種類に依存します。

STM32F1xx, STM32F2xx, STM32F4xx, STM32L0xx, STM32L1xx では I2Cv1 が使われます。
STM32F0xx, STM32F3xx, STM32F7xx, STM32L4xx では I2Cv2 が使われます。

I2Cv1

STM32 MCU の I2Cv1 では、クロック周波数とデューティ比を次の変数で変更できます。詳しくは https://www.playembedded.org/blog/stm32-i2c-chibios/#I2Cv1_configuration_structure を参照してください。

変数 既定値
I2C1_OPMODE OPMODE_I2C
I2C1_CLOCK_SPEED 100000
I2C1_DUTY_CYCLE STD_DUTY_CYCLE

I2Cv2

STM32 MCU の I2Cv2 では、信号のタイミングパラメータを次の変数で変更できます。詳しくは https://www.st.com/en/embedded-software/stsw-stm32126.html を参照してください。

変数 既定値
I2C1_TIMINGR_PRESC 15U
I2C1_TIMINGR_SCLDEL 4U
I2C1_TIMINGR_SDADEL 2U
I2C1_TIMINGR_SCLH 15U
I2C1_TIMINGR_SCLL 21U

STM32 MCU では GPIO ピンを設定するとき、別の「代替機能」モードを使うことができます。これは I2Cv2 モードで使われるピンを変更するために必要です。適切な設定値は、使用している MCU のデータシートを参照してください。

変数 既定値
I2C1_SCL_PAL_MODE 4
I2C1_SDA_PAL_MODE 4

その他

void i2c_init(void) 関数は weak 属性が付いており、オーバーロードすることができます。この場合、上記で設定した変数は使用されません。可能な GPIO の設定については、 MCU のデータシートを参照してください。次に示すのは初期化関数の例です:

void i2c_init(void)
{
  setPinInput(B6); // Try releasing special pins for a short time
  setPinInput(B7);
  wait_ms(10); // Wait for the release to happen

  palSetPadMode(GPIOB, 6, PAL_MODE_ALTERNATE(4) | PAL_STM32_OTYPE_OPENDRAIN | PAL_STM32_PUPDR_PULLUP); // Set B6 to I2C function
  palSetPadMode(GPIOB, 7, PAL_MODE_ALTERNATE(4) | PAL_STM32_OTYPE_OPENDRAIN | PAL_STM32_PUPDR_PULLUP); // Set B7 to I2C function
}